外国語アラカルト

外国語を学ぶ楽しさはいろいろな発見にあると思います。発音上の面白い特徴や発音のコツ、そして他言語間のいろいろな共通性の発見等々です。私は中学に入ったころは英語が大嫌いでした。中学に入る少し前、母親に無理やり近所の英語教室に入れられました。アルファベットを見るだけで反吐が出るほど嫌な英語でした。そんな訳で中学一二年の頃は英語の成績は最悪でした。試験の時に英語の先生がA,B,C,D,E,F6段階の評価をつけて答案を返してくれましたが私はいつもFをもらっていたのです。高校生になってこんな状態を心配してか父親が英語の家庭教師をつけてくれました。その先生は24ヶ国語を独学で学んだという語学の天才でした。明治期から昭和初期にかけて日本の英語教育に大きな影響を与えた英語教科書National Readersを使っての指導でした。時にはラテン語からどのように英語の単語が派生しているか等も教えてもらったのです。そんな時学校でも英語のEtymology(語源学)に基づいて英単語を学ばせる先生に出会ったのです。簡単に言えばcon-,de-,dis-,ex-,in-, pre- ,pro-,re-,sub-等々の接頭語とduce,tain, sist,cur,port 等の語幹の意味を覚えれば接頭語と語幹をいろいろ組みあわせて掛け合わせられる数の単語の意味を比較的楽に覚えられる。私はWilliam SkeatEtymological English Dictionaryを手に入れて高校2年の時教科書に出てくる英単語の語源を調べるのに夢中になりその年の夏休みに一気に英単語5000語ほどを覚えて学校の成績も英語はすべて10段階評価のトップになったのです。寝食を忘れるぐらい語源の研究にはまっていたので母親に体を壊すから勉強時間を少し減らすようにと言われるほどでした。Etymology以外にもグリムの法則というのが後のラテン系の言語の習得に非常に役に立ちました。グリムは童話などでよく知られているが実は言語学者であり古典語とゲルマン語の間にみられる子音対応に関する規則をグリムの法則として発表しています。ここでは細かい話はしませんが簡単に言ってしまえば「d」と「t」、「p」と「b」、「y」と「g」等々同類であるということであり、それらを頭に入れておけば新しく習う外国語の単語でもすでに習った外国語(例えば英語)の単語から類推出来てしまいます。面白い例として「g」と「y」が同じと分かればドイツ語のgelp(黄色)は英語のyellowと又gestern(昨日)は英語のyesterdayと類推出来覚えやすいのです。グリムの法則にはなくても自分で他言語間の関連を見つけると楽しくなります。例えばフランス語の「é」が英語の「s」に対応しているのに気が付いた時はうれしかった。例えば、

États-Unis(United-States)école(school), étoile(star)等々沢山あります。日中韓の単語にも発音上いろいろな規則性のある関連がみられて面白です。単語だけではなく他言語間にはいろいろな類似性がみられて面白いのです。以下、私が外国語を学んでいて気が付いたことをあれこれと紹介します。

 

e」の効用

(1)  aは「ア」と読むか「エイ」と読むかと聞かれたらあなたはどう答えるでしょう。

それがもし、

a  i  u  e  o  ka ki ku ke ko  sa si su se so ---と並んでいて先頭の「a」は何と読みますかと聞かれればアイウエオの「ア」と答えるでしょうし、a, b, c, d, e, f, g---と並んでいて先頭の「a」は何と読みますかときかれれば躊躇なくエイ、ビー、シーの「エイ」とこたえるでしょう。このように英語の5っの母音には二種類の発音があります。 これは一寸日本語の漢字の読みに訓読みと音読みがあるようなものですね。最も漢字の読みには同じ漢字が複数の違った読み方をされるものが多いのに英語のa  i  u  e  o  は日本語のローマ字読み(これを仮に日本語読みとよびましょう)と英語読みが存在します。では文中にたくさん現れるこれら無数の母音をどうやって読みわけているのでしょうか?

 

「何番目の」という言い方が英語にはないのである。たとえばGoogle翻訳で「ケネディーは何番目の大統領ですか?」を翻訳しようとすると「What number are you President Kennedy?」といった訳のわからない英文となってしまい適当な英文が出てこない。これに対して韓国語に翻訳すると正しい韓国語となるのである。

 筑波と言えない韓国人、花と言えないフランス人

 

発音の多様性

英語のa,[i],u,e,oがそれぞれ二通りの発音をもつのみならずghの発音も一通りではなくいろいろと変化する。 たとえばenoughにおいてはfの音になるしghostに於いてはgの音であり又daughterでは無音となるなどである。これに対してドイツ語やフランス語ではアルファベットの文字が無声とはなることがあっても複数の読み方をすることはまずないので日本人には難しい発音があるにしても英語ほど面倒くさくない。ところが外国人が日本語を学ぶ際にぶち当たる難関の一つは一つの漢字が幾通りもの読み方を持っていることで

ある。たとえば「家」という字にはは5通りの読み方が存在する。政治家(セイジ)、家来(ライ)、家賃(チン)、家柄(イエガラ)、家の庭(ウチのニワ)。一般的には漢字には音読みと訓読みの二通りであるが和製漢字の峠などは「トウゲ」と一通りの読み方しか存在しない。

 

会話のコツ

話し相手とコミュニケーションするには黙っていては話にならない。まずは「フフン、フフン」とあいづちを打つことから始めたい。黙っていては相手は自分の話を聞いてもらっているのかわからず会話が途切れてしまう。次に相手の使う言語の語彙が少なく文法もよくわからない場合は伝えたいことのポイントとなる単語をいうことである。はじめは文法など考えていては会話にならない。私は大学でESSEnglish Speaking Society)のクラブに入った時なかなか英会話にならなかった。それは英語の単語はたくさん知っていた(語彙が豊富)のに文法にこだわって主語のIからしゃべりだすも肝心な次の言葉がなかなか出てこなかったせいである。たとえば「I love you」と言いたいときにI(アイ)を言って次の「love」が口ごもってなかなか出てこなければ相手には何も伝わらないわけである。この文のなかの一番重要な単語は「I」でなくて「Love」のはずである。会話がうまくなる人は文法などお構いなくこの最も情報量の多い「Love」からまくしたてる。例えば外国へ行って「トイレはどこですか?」を尋ねたいとき(英語の例で言うと)「Where is the toilet?」のWhereWhere?と言っても相手には要件が伝わらないが「toilet?」と言えばこちらの訊きたいことが分かるというものである。即ち正しい文をしゃべれないなら伝えたい内容に関して一番情報量の多い単語から喋ることである。上の二つの文では間違いなく「Love」と「Toilet」がそれである。

 

同じ文字が別の発音になってしまう例はまぎらわしいことこの上ない。例えばロシア語では「H」がNとなり「P」がRとして使われトルコ語では「I」がUの発音になるなどである。残念ながらロシア語とトルコ語は勉強した期間があまり長くないのでその変化の由来などを調べる機会がなかった。

日本人が間違いやすいYesと言う言葉。

若いころイギリス人風来坊のサスーンと知り合った。ある時東京の町を案内していて寿司屋の前を通りかかった。当時、生の魚(raw fish)を食べる外国人などあまりいなかった。そこで私は当然彼も嫌いだろうと思って「You don't like sushi, do you?]と尋ねた。すると彼は「Yes!」と答えたのです。「Yes」を直訳すると「はいそうです」となります。私は「やっぱりね。好きでないんだ」と解釈してしまったのだす。本当に彼が言いたかったのは「Yes,I do(like) sushi」の意味だったと分かったのは彼と可なり付き合った後だった。このYesの解釈の間違いはあまり英語が得意でない日本人が往々おかす過である。ところがこんな時、フランス語ではOuiの代わりにSiをドイツ語の場合はJaの代わりにDochを使うので「いや、とんでもない、そんなことないですよ」と判るのである。